えぎぃがブツブツ言う

一人称が不明瞭

椅子とオナラ冤罪事件

肝心な時には、往々にして思い通りにならないものである。

 

 

小学生男子という生き物は、おならという人体の神秘に対して尋常ならざる反応を示す。

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クラスメイトが盛大に放屁をした時、彼らは鬼の首を取ったように狂喜乱舞する。

期せずして放屁をしてしまった子の人権などお構いなしである。その子のあだ名が「おならマン」になり、彼の人生の歯車を大きく狂わせてしまうことは想像に難くない。

授業中におならをしてしまうことは、これからの学生生活に甚大な影響を与えるのだ。学校が世界の全てである小学生には死活問題である。

 

小学生だった私も例に漏れず、授業中は肛門括約筋に限界まで力を入れ、放屁のリスクを回避していた。

気を抜いて、プゥと情けない音を出そうものなら今まで築き上げてきたクールアンドビューティアンドジュディアンドマリーなキャラクターが音を立てて瓦解してしまう。

瓦礫の落ちる音ならともかく、おならの音で崩壊するなんて私の自尊心が許さない。

だが私は油断していた。屁はこかなかった。しかし、余裕をぶっこいていた。それはもう、ぶっこきまくっていた。

 

何の気なしに椅子を引いた。

 

ブッ

 

それは椅子の足と床の摩擦音であるわけだが、それを理解しているのは椅子の振動を感じていた私だけだ。

だが周囲の人はそれを完全に屁と認識している。好奇の目が私に向けられる。

(まずいな…はやく誤解を解かないと…)

 

「いや違うから(笑) 椅子の音だから(笑)」

 

そう言って私はもう一度椅子を引いて同じ音を再現しようとした。

 

しかし鳴らなかった。

 

周囲はニヤニヤしながら私を見る。

 

「いや本当に椅子の音なんだって!」

 

そう言ってもう一度椅子を引く。

 

………………。

 

残酷な静寂が私を包む。

 

全てを悟り反論する意思さえ無くした私。

 

辺りに響く嘲笑と同情。

 

神は無慈悲だ。齢九つのちっぽけな魂さえ救えずに何が創造主か。

 

クールアンドビューティアンドタッキーアンド翼なキャラクターが椅子と床の摩擦音を立てて崩れ落ちるのが分かった。

 

明日からはおならマン。

 

 

フッ…覚悟はできてるさ…

 

 

 

おならマンとしての私がどんな扱いを受け、どんな小学時代を過ごしたかは皆さんの想像に丸投げする。素敵な後日談を付けて欲しい。ではさよおなら。